よりくつろげる美術館へ / 横浜美術館リニューアル/空間構築、サイン計画

20250210

リニューアルオープンに際した什器とサイン計画のデザイン

2021年3月から約3年にわたる大規模改修工事を経てリニューアルオープンした横浜美術館の空間構築のデザインとして、什器制作とサイン計画を行うプロジェクトです。美術館の設計者である丹下健三が使った御影石に埋め込まれている色を抽出し、ピンクから茶色に至るグラデーションを持つ11種類のキーカラーでオリジナルの什器を製作しています。横浜美術館の特徴である巨大な天窓が修復されたことをいかし、自然光の下で石の色と什器がお互いに引き立てあい、和らいだ雰囲気が漂う場所を目指しました。

人々を迎え入れるまるまるラウンジ

入ってすぐ正面の「まるまるラウンジ」にはいろいろなサイズのテーブルと椅子を揃え、ひとりでも、みんなでいても居場所と感じられる場所になればと考えました。什器の製作にあたっては、さまざまな障がいのある方たちと共にインクルーシブワークショップを実施しました。原寸大のモックアップを試しながら知見を得るという貴重な機会がなければ生まれなかった家具もあります。

さまざまな什器による居場所づくり

ユニット化した什器はシーンにあわせて組み合わせが変えられるようになっています。リニューアルに伴って大階段を中心に大きく拡張される無料スペースの「じゆうエリア」にも什器やカーペットなどを設え、さまざまにくつろげる場所を計画しました。くつを脱いで過ごせるスペースもあります。また、3階の展覧会エリアでは、無料ゾーンと有料ゾーンの境にジグザグパーティションを設置し、展覧会によってエリアを可変しながらゆるやかに区切れるようにしています。

可動式のサインやグリッドの看板

館内をわかりやすく案内するために、可動式の看板や壁付けの看板などを設置しています。可動看板は大中小3つのサイズがあり、それぞれ板は取り外しが可能です。また、グリッドの引いてあるピンクの板はマグネットで掲示が可能な部分です。既成品のロッカーにもキーカラーを施し、サイン計画の一部として番号やキーのデザインを行っています。

屋外にも展開する什器やサイン

ポルティコの内外に外部用のテーブルと椅子を配置し、「じゆうエリア」を外部にも展開しています。「美術の広場」には自立看板を設置し、エントランス、図書室、アトリエをそれぞれ案内しています。ポルティコの柱にも誘導サインとポスター掲示を兼ねたL型のサインを設置しています。カフェの中からポルティコを見るときにも似たような色合いの什器が屋外に展開しています。

期間

2022.7〜2024.3

担当

乾久美子、沼田優花、大藤尚生、福嶋海仁

所在地

神奈川県

施主

横浜市
横浜美術館

空間構築

乾久美子建築設計事務所
菊地敦己事務所

構造

TECTONICA

什器設計協力

ニュウファニチャーワークス

施工

株式会社デザインアートセンター(什器・可動サイン)
清水建設株式会社(固定サイン)

撮影

morinakayasuaki