明るい外とほの暗い室内のコントラストが生み出すなつかしい居心地 / ハウスO
影の形をそのまま建築の形にする
この住宅はすこし変わった方法で設計をしています。一方からは真四角の建築、それ以外の方向からは大きな屋根をもつ建築にみえるような形態になっていますが、これは、とある時間の影の形をそのまま建物の形に置き換えたものです。まちを歩いていてビルの上のほうが斜めになっているのを見ることが多いと思います。斜線制限という建築基準法の規定のひとつですが、周辺の敷地に落ちる影をできるだけ少なくするような意味がありますが、その考え方を自分の敷地の中にも適用してみようとしました。それにより室内の大きな軌跡をつくりながら、外周に設定した小さな庭や中庭にできるだけ光が入るようにしました。
明るい外とほの暗い室内という組み合わせ
家の外には、小さく明るい庭がいろいろな方向に点在しています。対して室内は、明るい外をを眺めるための落ち着いた居場所として感じられるよう、薄くグレーかかった塗装をほどこして、すこしトーンを落としています。乾が敬愛する地理学者のジェイ・アプルトンが提唱する「眺望=隠れ家理論 (prospect-refuge theory)」の考え方を取り入れ、戸建て住宅と小さな会社や工場が混在するすこし雑多な地域の中でも、落ち着いた暮らしや居心地をつくりだそうと考えました。住み始めてから数年たった施主に様子を聞いてみたところ、「影を建築にするというアイデアについて、中庭や住宅の周りの光と風が、柔らかに薄暗い室内に浸透してくる感じが気持ちが良い、人は二次元ではなく、空間で生活しているということを実感させてくれる居心地の良い住宅だと思います。」という嬉しいコメントをいただきました。
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information
- 期間
2009.8〜2015.4
- 用途
住宅
- 担当
乾久美子、山根俊輔、綿引洋、加藤イオ
- 所在地
東京都
- 延床面積
168㎡
- 設計
建築 乾久美子建築設計事務所
構造 小西泰孝建築構造設計
機械 yamada machinery office
照明 EOSplus
外構、造園 ザ・シーズン世田谷- 施工
青
- 撮影
阿野太一、山岸剛