庇を重ねて住宅にする / ハウスM
階によって勾配の違う庇が重なってできる住宅
敷地は新設された都道によって生まれたヘタ地であり、奥行きが浅く間口が広いものでした。そこに3枚の片流れの屋根(=コンリートの床)をそっと浮かべるように設定し、その下をリビング・ダイニングや寝室にしています。片流れの屋根は階によって勾配の方向を変えています。それにより、1階の屋根は道路側に対してお辞儀をするような角度になっているので、庇の下にあるような場所になり、縁側のような落ち着きと道に対するつながりがある場所になっています。2階は上下の屋根がセットになって道路に対して開くような角度になっているので、道に対して大きく開いたような雰囲気があります。3階は2階と逆で、道路に対して閉じるような角度になっているので、個室としてのプライバシーを感じやすいフロアになっています。
南国のような大らかさ
奥行が浅い住宅なのでどの場所も光と風にあふれており、クライアントが求めていた南国のリゾートのような生活を穏やかに達成しています。南国は内外のどこにでも居場所があるようなおおらかさが魅力ですが、この住宅でもちょっとした小あがりやベンチなどを散りばめて、どこもでも居場所として感じられるような工夫をしています。1階のベンチは近所のお年寄りが座っていることも…。また、道路の植え込みスペースは施主によるギャングスタ園芸が展開しています。昔の家のように、個人の生活に閉じこもらない、周辺の環境やコミュニティと関係しあうおおらかな生活が営まれています。
「小さな風景からの学び」がいっぱい
本プロジェクトは当時の東京芸術大学乾研究室のメンバー(李ヘドゥンさん、遠藤郁さん、湯ノ迫史さんと助手の市川竜吾さん)と一緒にデザイン・設計が行われました。このプロジェクトだけではありませんが、「小さな風景からの学び」のリサーチで得た知見がふんだんにいきています。
information
- 期間
2014.4〜2015.12
- 用途
住宅
- 担当
乾久美子、市川竜吾、遠藤郁、李ヘドゥン、湯ノ迫史
- 所在地
東京都
- 延床面積
84m2
- 設計
建築 乾久美子建築設計事務所+東京藝術大学乾久美子研究室+市川竜吾
構造 テクトニカ、東京藝術大学金田充弘研究室+倉重正義
設備 ケンテック- 施工
工藤工務店
- 撮影
阿野太一、新建築社写真部