まちを見下ろす慰霊の場 / 東日本大震災津波物故者納骨堂

20171013
20171013

カーブの形で優しい気配を醸し出す

東日本大震災で被害を受けられた方々のための納骨と慰霊の場です。身元が不明のご遺骨を納めています。敷地は甚大な被害を受けた大槌町の中心市街地を見渡す丘の上にあります。大槌湾を望み、復興の営みを日々見守ることのできる場所でしたが、既存の体育館の駐車場の片隅であったため、建築と一体となった塀をつくり、落ち着いた安らぎの場を確保しました。屋根は発災時2011年3月11日14時46分の太陽の方向に向かっています。建築の一部でもあり塀でもある壁のゆったりしたカーブは、さまざまな条件を緩やかに溶かしながら、慰霊に来られた方々に対しての居場所を提供しています。カーブした壁に沿わせて端部を欠き取った屋根を、人がかぶる笠のような佇まいに重ね合わせ、そこにそっと人がいるような優しい気配を醸し出そうとしました。建設後、ご遺骨の身元の判明は少しずつ進んでいます。

祈りをささえるディテール

管理が行き届いた墓地に行くと、みなが使えるバケツや柄杓、掃除道具が用意されています。場所をきれいにすることが、祈りと共にあることがわかります。本計画も深い軒を利用して、見えるところに掃除道具を用意しています。また、高齢の方の利用を考え、ベンチを用意しています。ベンチは塀を支える構造的な要素でもあります。

20171013

information

期間

2015.2〜2017.02

用途

納骨堂

担当

乾久美子、小坂怜、山根俊輔、綿引洋、大藤尚生

所在地

岩手県大槌町

延床面積

10m2

施主

大槌町

設計

建築 乾久美子建築設計事務所
造成 東京建設コンサルタント
構造 KAP
設備 EOSplus
サイン 菊地敦己事務所
設計アドバイザー 岩間正行、岩間妙子

施工

建築 山口建設
木工事 中東
ガラス、建具工事 旭ビルウォール
給水 大安環境
電気 田中電気工事

撮影

新建築社写真部