世界遺産・宮島の玄関口 / 宮島口旅客ターミナル

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瀬戸内の風景と共にあるターミナル

敷地は世界遺産・宮島の対岸。目の前に広がる瀬戸内海の美しい風景や気持ちのよい気候に誰しもが感銘を受ける場所です。設計をするにあたり、ターミナルを室内に閉じた施設としてではなく多くの居場所を半屋外空間として、これから宮島へと向かう方々の気持ちを開放するような場所にできればと考えました。屋根の下の多くは半屋外空間です。その中に、フェリー運航事業の事務所やお土産物屋、観光案内所などのがはいった小さなスペースをいくつかのハコに分けて、入れ子状に散りばめています。

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地区全体の回遊性と景観の向上を目指す

宮島の玄関口であるフェリーターミナルとして、年間400万人の方を受け入れる施設になります。広島県が開催する設計プロポーザルで選定され、設計から工事監理まで関わってきました。敷地のある宮島口地区は駐車場が多く、宮島観光の通過点としての位置にとどまっていることが地区の悩みの中、2016年に策定された「宮島口地区まちづくりグランドデザイン」によって、地区全体の訪問客の滞留性を向上させることが目指されるようになりました。その成果を踏まえて実施されたフェリーターミナルの設計プロポーザルでは、宮島との繋がりを意識した景観づくりと宮島口地区全体の回遊性の向上を担うような提案が求められました。それに対してゆったりとしたカーブを描く大らかな屋根が特徴の建築を提案しました。

大屋根の下に小さなスペースをちりばめる

ハコは周辺にあるお店のサイズに近づけて小さくし、ターミナルにおける活動を周辺のまちなみに連続させることを大切にしました。設計中、敷地に通う中で周辺のお店がひとつひとつ魅力的であることを発見し、そうしたお店と一体となって、地域全体の新しい賑わいを生み出せればと考えました。構造形式は厳島神社の大鳥居の独創的な構造形式から着想しました。大屋根とその鉛直力を受ける柱(メインフレーム)に下部構造(サブフレーム)が取り付くことで、全体を安定させるような合理性を構造設計者と一緒に追及しています。屋根は2枚に分かれており、その隙間に「海辺の回遊軸」と呼ばれる護岸沿いの遊歩道(将来建設予定)を敷地内に引き込むような形をしています。遊歩道はターミナルを貫き、その先にある「大しゃもじ広場」へと人を導く動線になっています。「大しゃもじ広場」は2023年に完成予定で、瀬戸内海の風景の中でマルシェやイベントを楽しめる新しい集いの場所になります。

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全体の完成は2023年、お楽しみに

旅客ターミナルに隣接するのは、広電宮島ガーデンが運営するHIRODEN ettoで、旅客ターミナルと一体となるように設計されています。
今後は「大しゃもじ広場」だけでなく、他の設計者による広電宮島口駅の移築、ロータリーの改修などの工事が進んでいきます。宮島口地区全体の完成は2023年が予定されています。それまで、私たちも広場などの監修を通して引き続き関わっていきます。

広島県は建築でもりあがっている!

本プロジェクトは広島県による「魅力ある建築物創造事業」の取り組みのひとつです。
広島県は他にも「ひろしまたてものがたり」という事業も継続的に行っており、近現代建築を知る機会を積極的につくろうとしています。宮島口旅客ターミナルも建物紹介動画などで参加しています。

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関連動画

Information

期間

2016.4〜2025予定

用途

旅客ターミナル、物産販売、情報発信スペース

担当

乾久美子、山根俊輔、芝原貴史、武蔵眞己

所在地

広島県廿日市市

延床面積

5671m2

施主

広島県

設計

建築 乾久美子建築設計事務所
構造 小西泰孝建築構造設計
設備 森村設計
屋外照明 シリウスライティングオフィス
屋内照明 大光電気 TACT
サイン 菊地敦己事務所
サッシ 旭ビルウォール

施工

建築 広成・広電特定建設工事共同企業体
機械 天満冷凍機
電気 大新電工
昇降機 日本オーチス・エレベータ

撮影

阿野太一、新建築社写真部