こどもの成長と地域の防災を支える拠点 / みんなの「ハナレ」(進行中)

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こどもの成長と地域の防災を支える拠点

高知県日高村において、社会福祉法人ぷらうらんどと共に進めている「児童ショートステイ施設」の計画です。15年後には人口の半数近くが65歳以上になると予測されるこの地域において、子どもたちの「療育の場」や地域の「防災拠点」となる新しい福祉建築のあり方を模索しています。周辺には、ぷらうらんどが運営する既存の児童発達支援センターや地域の集会所が点在しており、本計画はそれらを補完し、地域を繋ぎ合わせる「ハナレ」としての役割を担います。また、第5回 日本財団 みらいの福祉施設建築プロジェクトで採択され、助成を受けることが決定し、計画が進行中です。

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ヤマから身を守り、ヤマに登っていくための建築

「みんなのハナレ」は、背後にヤマを背負い、そのふもとに位置しています。このヤマは土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)にも指定されています。建築は、土砂災害に耐えうる堅牢なRC構造の壁を斜面に対して配置し、ヤマに登っていくためのステップとなる階段状の構成をとっています。その上に木造の屋根を架け渡すことで、頑丈なシェルターでありながら、居場所としての安心感や入りやすい開かれた印象を目指しました。また、RC造によって生まれる大きな空間を生かし、1階は縁側や広間、キッチンをバランスよく配置した多目的な一室空間としています。

「みんなのハナレ」が担う3つの要素

この場所が担う役割は、福祉・交流・防災という3つの要素が重なり合うことで形作られます。2階には緊急時の親子宿泊も可能な6室のショートステイ個室を完備し、専門的なメンタルケアや、不登校・ひきこもりの子どもたちの居場所を提供します。一方で1階には、高齢者と子どもたちが自然に触れ合える大広間を創出しました。ここで多世代が共に食事を楽しみ、育児の知恵を共有することで、地域社会の孤立を防ぐ場所となります。また、災害時には100名規模の避難所として機能し、ライフラインが止まってもヤマの薪で炊事や入浴ができるなど、日常的な「避難体験」を通じた備えを地域に根付かせていきます。

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時間をかけてヤマを再生する

荒廃し土砂災害のリスクとなっていた斜面を、子どもたちや地域住民と一緒に時間をかけて遊びの森へと再生していきます。土に触れ、苗木を植え、遊び場をつくるという身体的な作業は、発達障害のある子どもたちの五感を刺激する療育プログラムにもつながります。地域で採取できるどんぐりから苗木を育てて植栽する「タネプロジェクト」をランドスケープアーキテクトの大野さんの指導のもとで行い、3年目には苗木が根を張り斜面が安定し始め、5年目になると木陰が広がりヤマでの活動が活発になっていきます。そして10年目には森が成熟し、大人になった子どもたちの心の故郷となっていくことを目指しています。日高村の新しい風景を、地域と共に育てていきたいと考えています。

information

期間

2023.11〜2028春予定

用途

児童ショートステイなど

担当

乾久美子、武蔵眞己、米山剛平、吉田真緒、姶良壮志

所在地

高知県日高村

延床面積

約250m2

施主

社会福祉法人 ぷらうらんど

設計

建築 乾久美子建築設計事務所
構造 KAP
設備 YMO
ランドスケープ SfG landscape architects