クレオール主義

19910720
文化人類学者として長年南北アメリカにおけるフィールドワークを行い、多文化の混淆について研究してきた今福龍太氏の本です。クレオールとは、混血性を指し、例えばブラジルは植民地主義により人種的混淆がもたらされ、「混血性」が存在している一つです。今福氏は様々は思想家の概念を紹介しながら、単一で統一された世界、の存在は幻想であり、いかなる社会も異言語混淆に満たされているという現実の対立について述べています。ブラジルの貧民街は都市の基本的なインフラも未整備の雑然として居住区ですが、歴史的には豊かな音楽文化や宗教文化といった民衆文化が生まれてきた場所であり、実際に訪れてみても、いきいきとした暮らしや工夫の凝らされたパブリックスペース等、都市で生きる知恵をたくさん観察しました。多様な文化や背景の混ざり合いや、それぞれの生き方が統一されるのではなく、混ざり合う状態が真の社会なのだと気付かされます。
出版年月日:1991.07.20
出版:青土社
著者:今福龍太