家とモノを繋ぐ / House N

複雑な立地と単純な構成
夫婦2人+子供1人+猫2匹のための住宅です。施主からの要望はシンプルで、マンションだけでなく倉庫を借りながら維持していたアウトドア用品や手芸用品など大量なモノたちをひとつの家に集約し、生活空間を成立させることでした。家までのアプローチがすこし複雑で、バス通りから私道に入り、一度曲がって、もう一度曲がって旗竿敷地に入り、さらに曲がって玄関にたどりつきます。そして、その先に立体的にひとつながりにつながった空間が広がります。一方で、建物そのものの構成は単純です。高さに関わる法規をクリアしながら最大の四角い箱を設定しました。ついでに南より開放感のある北に大きな庭を作りました。高さはロフトと居室の積層を2回繰り返しています。その中に予算から割り出した面積分の床を配置し、階段で繋いでいくという構成としました。
3間×3間半の中で立体的に計画する
平面的には、3間×3間半の中に少し大きなテーブルを置き、ゆとりある幅員をとった階段下に洗面を納めるなど、メリハリをつけた計画としました。構造材のアカマツ集成材とラーチ合板に加えて、仕上げにラワン合板とゴム集成材を選定し、構造、階段、壁、家具、枠に渡り、横断的に使用しました。開口は外部に対して抜けをつくるように各面に配置し、北側を大きくとりました。大きな気積と四方にあいた開口部によって、色や質感などばらつきのある木材と多種多様なモノの存在を受け止めつつ、開放的な雰囲気が残るようにしています。部分的に配置した白塗装の壁や、外構のレンガ敷きと合わせた赤いビニル床シートも、背景としての開放性をつくろうとした要素です。構造体と既成サッシの組み合わせがつくるズレや、床の先端に追加したはね出しは、猫やモノの拠り所となることを想像し、少しだけ余裕のある寸法としました。真壁としながら配線は隠蔽とすることを優先し、納まりに無理のある部分は壁をふかして柱より出っ張る部分を許容しています。工務店の施工範囲に加え、大きな収納や手摺に関連するものなど最低限の部位は設計事務所の自主施工を行いましたが、結果、自らの施工能力に限定されながらも、職人の制作とDIYとの橋渡し的な存在となったと考えています。
生活を受け入れていく家
その後、施主がスペースを発見しながら制作を続け、棚や珈琲焙煎器の煙突、神棚などが追加されていっています。様々な制約の中で行われた設計のひとつひとつの判断は、木造の確かなフレームの構成にところどころでスキをつくることへとつながり、生活を受け入れることへ向かっていくと考えています。
- 期間
2022.10〜2024.03
- 用途
住宅
- 担当
乾久美子 大藤尚生 中島千裕 武蔵眞己 川又修平
- 所在地
東京都
- 延床面積
62.04m2
- 設計
建築 乾久美子建築設計事務所
構造 満田衛資構造計画研
設備 MACHITEC- 施工
株式会社 青
- 撮影
新建築写真部、乾久美子建築設計事務所